地域限定社員とは
地域限定社員とは
地域限定社員とは勤務地を限定し、転居を伴う異動(転勤)が発令されない正規雇用労働者の事をいいます。
例えばこんなケースです!
アルバイト・パートタイム労働者などの非正規雇用労働者を正規雇用に転換させる際に、労働者側にとってネックになることが多いのが勤務地の問題です。
全国区に転勤する可能性のある正規雇用労働者になると、家庭との両立が困難になることから、女性の登用の妨げとるケースがこれまで多くありました。
能力や意欲があったとしても、転勤の辞令を受けたら自ら非正規雇用を選択するか離職するケースが珍しくなく、長年企業側もそれを受け入れてきました。
労働力の減少と働き方改革が影響?
しかし、労働力人口の減少や働き方の価値観の多様化に伴い、企業にとって有用な人材の確保のため地域限定社員制度を導入する企業が近年増えてきています。
政府も後押しをする制度であり、その傾向は今後も強まっていのではないでしょうか。
有能な労働力を確保する意味でも、企業にとっては地域限定社員制度は必要な制度といえましょう。
増加傾向にある地域限定社員
全国各業種1,000社を対象とした調査によれば地域限定社員が在籍している割合は、調査対象のうち複数の事業所に限定すると12.4%です。(データは2011年のもの)
その後2015年の調査によれば、勤務地が限定される働き方の区分がある企業は19.4%となっています。
地域限定社員の割合は今後も大きくなる?
単純比較すると、2011年から1.5倍以上増加したことになります。
勤務地限定社員を含めた「多様な正社員」を今後導入(増員)する予定がある企業は全体では20.4%だったものの、1000人以上の従業員がいる企業では37.2%にのぼり、正規労働者全体に占める地域限定社員の割合は、今後も大きくなっていくと見込まれます。
ユニクロも2007年から導入した?
2007年にユニクロが地域限定正社員制度を導入し、店舗勤務の非正規社員の正社員化を進め始めました。
また、2014年には日本郵政が地域限定社員を20,000人採用すると発表しています。
地域限定社員とアルバイトや正社員の違いは
ここで、地域限定社員と、他の雇用区分との違いを具体的に確認してみましょう。
地域限定社員の定義上、明確な点もありますが企業ごとに実態が異なる点もあります。
転居を伴う異動のない正規雇用労働者
非正規雇用であるバート・アルバイトとの大きな違いは雇用期限です。
パート・アルバイト労働者が有期雇用契約を結んでいるのに対し、地域限定社員は雇用期限に定めのない、いわゆる無期雇用契約となります。
正規雇用である正社員と明確に異なるのは、前述のように転居を伴う異動がないことです。
仕事の内容・権限
従来から転勤がない前提のアルバイト・パートや一般職社員の場合、職務も限定的であることが普通でした。
それに比べると、地域限定社員については職域、つまり仕事の幅が広がるケースが多いと言えます。
それに伴い、責任範囲も広くなり、自らの判断にもとづいてスタッフへの指示を行うなどの権限を持つことになるでしょう。
昇格やキャリア形成
アルバイト・バート社員の場合は、その雇用区分の中でのリーダー職を任命されることはありえます。
しかしながら、いわゆる管理職としてのキャリアまで用意している企業は稀でしょう。
例えば育児や介護等、家庭の事情で転勤ができない時期は地域限定社員として勤務し、その事情が解消した後は無限定の正社員として上級管理職を目指す、というキャリア形成も可能だということです。
解雇しやすい雇用形態?
現段階では解雇規制の緩和について結論が出ているわけではなく、無限定の正社員と比べて解雇しやすいとまでは言えないと考えたほうがいいでしょう。
企業の事情による、いわゆる整理解雇を実施する要件としては、①人員整理が本当に必要か②解雇を避ける努力をしたか(異動先の提案等) ③誰を解雇するか、合理的に選んだか ④解雇手続は妥当なものかの4点があり、これは限定社員に対しても同じように考えなければいけないからです。
地域限定社員の給料や賞与の仕組み
職位に対して手当てを付与する賃金体系を取っている場合では、職位が上がるほど正社員との差が大きくなると考えられます。
一方、通勤交通費の支給や健康保険/厚生年金、福利厚生については正社員との差は少ないとする調査結果があります。
地域限定社員制度を導入するメリット
地域限定社員とはどのような特徴を持つ雇用区分なのか、これまで確認してきました。この制度を導入することの、企業側から見たメリットを改めてまとめておきます。
ワーク・ライフ・バランス
ひとつはワーク・ライフ・バランスの担保です。
転勤がないことは、例えば住宅の購入などの決断をしやすくするでしょう。
勤務地域が限定されていれば、通勤にかかる時間も一定範囲内に収まると考えられます。
ダイバーシティ
もうひとつは、ダイバーシティの実現です。
従来の無限定な正社員かパート・アルバイトかという2極の雇用区分しかない場合、例えば出産や育児、介護といったライフステージ上の変化が社員に起こったときに、柔軟な対応が困難です。
これらは既に女性だけの問題ではなくなっており、そういった事情を抱えている多くの労働力の活躍を促進するでしょう。
人材確保の有効な手段
現在のところ、能力も意欲もありながら、様々な理由から非正規雇用にとどまらざるを得ないケース、または離職を余儀なくされるケースも少なくありません。
勤務地域を限定することで、企業にとって有用な人材の採用・登用・流出防止を図ることができます。
地域限定社員制度を導入するデメリット
では逆に、地域限定社員制度を導入することの、企業にとってのデメリットはどんなことが考えられるでしょうか。
人件費コストの増加
先に見てきたように、パート・アルバイトと比べると賃金水準を高めとすることが一般的なため、非正規雇用労働者の登用の受け皿として考える場合、人件費はどうしても増加することになります。
雇止めができなくなる
その地域の事業規模を縮小するなどの場合には、要員がだぶついてしまうことも考えられます。
これも決して解雇しやすい雇用区分とは言えないため、人員整理の必要が出た場合には特に配慮する必要があります。
賃金等の待遇や評価・昇格についての公平性の確保
人事評価制度も複雑化しやすく、透明性や公平性を確保するための努力は今まで以上に必要となると言えるでしょう。
同一にしては無限定社員の不満につながり、大きな格差をつければ地域限定社員の不満につながります。
あるいは「同一労働・同一賃金」の問題に抵触する可能性なども、考慮しなければいけません。
地域限定社員制度を導入している企業の事例
ユニクロ
ユニクロの地域限定正社員制度は、2007年に非正規雇用労働者の正規化を目的として運用を開始しました。
当時、目標として5,000人を正社員化するとして注目を集めましたが、現実には7年かけても1,400人程度にとどまりました。
その理由を、同社では「正社員と同じく、繁忙期である土日の勤務や週40時間のフルタイム労働を求めた点に無理があった」(ファーストリテイリング広報)と分析しています。
日本郵政
ユニクロが地域限定社員を16,000人増加させると発表した同じ2014年、それを上回る20,000人の目標を掲げたのが日本郵政グループです。
現在、非正規からの登用に加え、新卒の採用枠に地域限定社員が組み込まれています。
呼称はグループ内の日本郵便・ゆうちょ銀行で地域基幹職・エリア基幹職と異なりますが、郵便局長や支店長への昇格制度も設けられている点は共通しています。
AOKI
紳士服を中心とした衣料品販売店を全国に展開するAOKIでも、地域限定正社員制度を設けています。
店長職やそれに準ずる役職につくケースもあると言い、女性の活躍というダイバーシティ実現のための制度導入であることが見て取れます。
各店舗に勤務するスタッフには女性が多いということで、家庭や育児との両立を目的とした制度設計がされています。
勤務地は自宅から90分以内とされ、勤務時間や勤務日についても柔軟に対応しているようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は地域限定社員とは?導入企業は?について触れてみました。働き方改革や雇用形態の多様性などにより、地域限定社員制度の導入企業は増加傾向にあることがわかりました。